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梅仕事の道草話



梅仕事の道草話

灰汁抜きの話

青い梅は水につけて灰汁抜きをする。傷みが進まないように冷水を使う。傷みがあるかどうかは見て直ぐに分からないので兎に角冷水の方が安心。とは言え、一晩(8時間)も漬けておけば常温になってしまうのは止むを得ない。2時間程度に抑えている人いる。

完熟梅は青い梅ほど灰汁抜きは重要でない(深刻でない)から気持ち程度でも構わない。30分程度?。水洗いで済ます人もいる。

灰汁抜きをすると色が悪くなる?

水が果皮組織に入り込むので、人間の肌で言えばシミのようなものができる。こんなの気にしているようでは自家製梅干しなど止めた方が良い。

コンポートは表皮の色も楽しむのではシミはご法度。コンポートぐらいだとシミは気にして十分というかシミの付いたものでは作りたくない。

灰汁抜きで分かること。

長時間、水に漬けてもシミなど付けないできれいな梅もある。表皮組織がしっかりしているのだ。超長時間は論外だが、適当時間(2時間~8時間)の灰汁抜きで良品の選別ができる。面白いものだ。良品は極上梅干にするかお菓子(コンポートなど)に使うのが良い。青い梅も完熟梅も基本的な理屈は変わらない。

土用干しの話

土用干し自体は、ここもご多聞に漏れないが、様々な我流がネット上に存在する。ご自身の気持ち合うやり方で良いでしょう。

(白漬け)

赤紫蘇漬けの梅干しと白漬け(単に赤紫蘇を入れないだけ)の梅干しは何か違いはあるか考えてみた。

白漬けの魅力は完熟梅の鮮やかな黄色にあることは言うまでもない。ところが、この白漬けを直射日光に晒すとどうなるか。今まで綺麗だったイエローがあっさり失われてしまった。 薄茶色。まあ、これはこれで悪くないが、より黄色い色に拘るなら、天日干しは止めて、梅酢漬けのまま食用した方が良いかもしれない。この場合、ちょっとした痛みも目立つのが白漬けの弱点。

(夜露の効果)

夜間は夜露を受けて日中奪われた水分が戻って熟成が進むとあるが、あまり信用できない。夜間の不安定な天候で雨に当たるのが落ちだろう。夜間は温度が下がって湿度が上がり梅の表面は幾分湿度を回復するのは確かだが、いずれ中途半端。夜間は雨の心配が無ければ夜風に当てて置けば良いが適当な場所が無ければ室内に取り込む。梅酢に戻すのは面倒。3日間も干したら干からびると思いきや、表皮がしっかりしていて肉厚なら形状変化は目立つようなものではない。3日目の夜または4日目の朝に取り込む。

(梅酢戻しと風干し)

一端、梅酢に戻す。狙いは日向臭さの除去だ。梅酢に戻すと塩分濃度が上がると心配する人は理科の勉強が足りない。梅酢の塩分濃度に均一化されるだけでむしろ塩分は抑えられることになる。梅酢に戻すのは1日でもいいし、1か月になっても構わない。曇りの日を選ぶか、天気の良い夜を選んで、風干しをする。風干し・日陰干し・夜干しは1日で十分。最終的な保存容器に収納する。

完熟梅(樹上完熟と追熟)

本当にきれいな梅を選別するには、実は樹上完熟梅(理想的とされている樹上完熟だが)は使わないで青い生梅を収穫した方が良い。灰汁抜き(8時間)で、表皮の傷んだものは仕分けして、綺麗なものだけを紙袋に入れて追熟してやる。紙袋を小分けしてエチレンの量をコントロールすればほどほど同時期に追熟を完了させることが出来る。綺麗なイエローで完熟させるには追熟が良い。

重石の話

植物の中の水分を早く外に押し出すのが目的。重いと植物の組織を壊してしまうし軽いと水分の押し出しが不十分になる。押し出された水分は外にある塩を溶かして塩水を作り、塩分が植物内に取り込まれるのを助ける。 重石などしなくても植物内の水分は塩に引かれて外に出るし、水溶化することで塩分は植物内に取り込まれる。

薄い塩分濃度で時間を掛けて塩分交換をやっていたらどうなるか。植物の鮮度が失われ、植物自身が持っている菌などにより腐敗することもある。昔は冷蔵庫が無いから、塩分濃度を高くする必要があったし、短時間で塩分交換が必要だったから、重石は必需品。冷蔵庫が使える今でも鮮度を大事にしたい時は重石は欠かせない。夕方漬けて翌朝食べる、朝漬けて夕方食べる、。

植物組織の破壊に目的がある場合はやはり重石を使うのだが、何が該当するのかは分からない。

時間を掛けても良いものは、重石は必要ない。代表の一つが梅干。 意図的な古漬けも同じだろう。シバ漬け、奈良漬け(粕漬け全般)。時間を掛けて良ければ組織破壊は時間(発酵または化学反応)がやってくれる。

空気の話

空気が怖いのは想定外の酸化、雑菌の入り込みとその繁殖の可能性が出て来ること。だから、ジプロックを使う場合は空気を極力追い出すようにする。ジッパーを掛ける前にホワイトリカーなどを噴霧しておく。ボトルを使う場合は、なるべく分量に合うサイズを選ぶこと。蓋をする前にホワイトリカーなどを噴霧しておく。梅の場合は自らクエン酸を持っていて雑菌などには強いので、それほど神経質になることは無いが、リスクが入り込まないように同じような手順を踏んだ方が良い。

減塩梅干

健康管理の観点から昔のような塩辛い梅干を敬遠する人が多い。塩分と一緒に酸味まで抜いた味気ない減塩梅干など全く好きになれないが、程よく減塩させた梅干なら許容できる。昔は20%から30%の塩を使っていたようだ。梅10キロ漬け込むと塩3キロ(3袋)は結構な量になる。

今は、昔風の味が好きなら15%は欲しいだろう。減塩に舌が慣れているなら10%ぐらいでも十分梅の酸っぱさと塩分を楽しめる。この程度なら冷蔵庫とホワイトリカーで安全に梅仕事を進めることが出来る。5%くらいまで減塩レベルを上げると保存性にリスクが出て来るし、単に酸っぱいだけの梅干しになるので魅力も半減する。食べる時にお湯で塩抜きする方が現実的な食べ方になるだろう。だから、減塩と梅干とは言っても10%程度で押さえるのが普通の環境では現実的な目標設定になる。

梅酢漬け(梅を干さない)

梅干にする直前の梅酢に漬けたものを梅酢漬けと呼んでそのまま食用することがある。比較的関東に多い。手間がかからないメリットに加えて、日向臭さが無いのもポイントになる。欠点は保存は効かない。7月に漬けても9月10月には消費してしまいたい。梅酢に漬けたままでも、梅酢を切って容器に入れてでも構わないが、基本は冷蔵庫に入れて季節ものと思ってさっさと食べてしまう。梅干しにありがちなねっとりした食感がないのも特徴と言えそうだ。

所詮、梅干しとは別物と思った方が良い。青い梅を使って作ればカリカリポリポリ美味しくいただけます。完熟梅で梅酢漬けを作る人は少ないでしょう。

保存の話

土用干し(天日干し、直射日光、3日)、梅酢戻し(日向臭さ取り除く、数日)、風干し(陰干し・夜干しなど1日)の後の保存イメージ。

(白梅干)

乾燥気味にする。梅酢が浸みだして来たら逆さにして零(こぼ)して取り出す。 保存。ボトルは小さなもの(1L~2L程度)を選んでびっしり入れる。空気を入れない。焼酎噴霧。

梅酢はキッチンタオルなどで濾過して、適当な用途(白梅酢漬けなど)に回す。

(赤梅干)

白梅干ほど乾燥に気を遣わなくても良い。赤梅酢が浸みだしていても、極端でなければ放置してよい。

風干しの時に、シソと混じらないように取り除く。少々は構わないが、シソが梅酢に長く使っているとどろどろになるので注意。基本的にはシソは出来るだけ綺麗に取り除いておいた方が良い。

赤梅酢は濾過して綺麗にしてから他の用途に回す。

シソは別に乾燥させてゆかり(赤紫蘇フリカケ、調味料)にしておくのが使い方も工夫できるので良さそうだ。シソは濡れたままにしておくとどろどろになって食欲の対象外になるので要注意。夏が終わるまでにゆかりにしておく。冷凍保存しての使いまわしなどは考えないこと。必ず後悔します。

梅干の保存容器は1年以上寝かせるつもりなら大きなサイズの容器を使う。直ぐに食用するなら小分けの方が扱いやすい。

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